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自分の書きたいことを好きに書かせていただく自己満足ブログです。日常生活のことや社会のことをざっくばらんに書いています。

「ゆるやかな絆」から見える生き心地の良さ

みなさん、こんにちは。

私です。

 

ここ数週間は予定が立て込んでいたため、記事の執筆がまったくできずにいました。

その予定もひと段落ついたので、一つ記事を書こうと思った次第でございます。

 

さて、今回は毎日放送MBS)という近畿広域圏でテレビ放送を行っているテレビ局で月に一回放送されているドキュメンタリー番組『映像'17』の4月30日放送を見て考えたことを書きます。

 

 

『映像'17』はMBSで月に一回、月末の日曜日深夜に放送される1時間のドキュメンタリー番組です。毎回異なるテーマで放送されていますが、今回視聴した2017年4月30日の放送は「『生き心地の良い町』を訪ねて ~徳島・海部の人々~」というテーマでした。

 

内容はとても興味深く面白いものだったのですが、内容について一から順に書いていくのもどうかと思いますので、『映像'17』の公式ホームページに掲載されていたあらすじを以下に引用します。

新年度はじめの番組は「自殺率の低い町」の密着です。和歌山県医大に勤務する研究者の調査結果をもとに、生き心地のいい町とはどんな町なのかを探求します。はたしてどこまで映像化が可能なのか、手探りの取材が続きます。

徳島県・旧海部町(現海陽町)。サーフィンの名所で知られるこの小さな町は「自殺者の少ない町」で知られるようになりました。自殺者の多いエリアや原因を探る研究は山ほどありますが“少ない理由”を分析した研究は皆無でした。和歌山県医大の岡檀(まゆみ)さんの著書「生き心地のいい町」は旧海部町の自殺の少ない理由を分析していて、増刷を重ねています。この本では自殺予防因子を5つ挙げています。
私たちは岡さんの研究を軸に旧海部町を訪ね歩き、「もしかしたらこれかも…」という場面を撮り続けています。海部の人たちは自分の考えをはっきり伝え、上下関係なく話し合う空気があります。「病、市に出せ」という、この町に古くから受け継がれるいい伝えがあります。病気や悩み事を隠さずにオープンにしていくことで、様々な問題を解決してきたそうです。「プライバシーがない」と苦笑する人もいますが、世話好きで細かなことを気にしない人が多いのかもしれません。ときどき訪れる食堂の店主は重たい荷物を持つカメラ助手の女の子を見て、私に「あんた、持ったらんかいな」と突っ込んできます。ルールや決まりごとに息苦しさを感じることが多い今、この町のそんな空気はなぜかいつも心地良いのです。これを見習えば自殺を予防できる!それを番組で伝えることはできません。ただ観ている人のこころが少しでも和み、心地いい生き方について考えるきっかけになればと思います。

http://www.mbs.jp/eizou/backno/170430.shtml

 

上記のあらすじを読んでいただけると分かりますが、徳島県の海部という地域は自殺率が低い町として知られています。番組内では自殺率の低い地域のことを「自殺"希少"地域」と呼んでいました。

日本はG7の参加国の中での自殺率が最も高い国です。自殺率が比較的高い先進国の日本にある「自殺"希少"地域」の海部を「生き心地の良い町」として紹介し、海部での現地調査および分析を行った社会学者・岡檀(まゆみ)さんの著書『生き心地の良い町』が、今回の番組のテーマ設定の決め手になったと番組内で語られていました。

 

上記あらすじにも書いてあるように、書籍『生き心地の良い町』では自殺予防因子が5つ紹介されています。5つの自殺予防因子は番組内でも紹介されていました。その5つとは、①いろんな人がいてもよい、いろんな人がいたほうがよい、②人物本位主義をつらぬく、③どうせ自分なんて、と考えない、④「病」は市に出せ、⑤ゆるやかにつながるです。

 

私はこの5つの自殺予防因子の中で、特に④と⑤に注目しました。

まず、④「病」は市に出せとはどういうことなのでしょうか。ここで言う「病」とは悩みのことです。例えば、病気になってしまったという悩みや育児の中で分からないことが出てきたという悩みなどです。「市に出」すとは隠さないようにするということです。市は公共の場です。つまり、悩みを隠さず公にしましょうということです。

みなさんどうでしょう。自身の悩みを隠さずに大っぴらに語ることができますか。私にはできそうにありません。しかし、海部では「病」を市に出すという行為が日々自然に行われています。

次に、⑤ゆるやかにつながるですが、これは分かりやすいですね。⑤は地域社会における人々のつながりのことを指しています。⑤の興味深いところはつながりの程度が「ゆるやか」というところです。「密接」でも「薄く」でもなく、「ゆるやか」な人のつながりが自殺の予防になっているのです。

 

自殺予防因子の④と⑤は、前近代の「ムラ」社会に見られる特徴に酷似しているように思います。前近代の「ムラ」社会がイメージしにくい方はNHK連続テレビ小説おしん』に登場する農村を思い浮かべてみてください。

前近代の「ムラ」社会は、「ムラ」の人々のつながりが強く、閉鎖的な社会です。地域の子どもは親が育てるのではなく、地域で育てるものとされていました。「地域で子どもを育てる」とは、自分の子どもであろうがなかろうが面倒を見るということです。

番組の中で子どもが泣いているときに近所のおっちゃんが面倒を見てくれたというエピソードが出てきます。このエピソードは「地域で子どもを育てる」ということを如実に表しているように思います。

他にも海部には、料理のおすそ分けや「朋輩組」という互助組織、共同の物干し場等のつどいの場の役割を果たす場所があることが番組から分かります。これらは近代都市には見られない前近代の「ムラ」社会に顕著なものです。

これより、海部には現在も前近代の「ムラ」的な地域社会があり、人々は地域のゆるやかな連帯の中で生活していることが分かります。自殺予防因子の④と⑤に限って言えば、前近代の「ムラ」社会の要素を残した地域では自殺率が相対的に低くなると考えられるでしょう。

 

ここで一つ考えてみてほしいのですが、海部のように自殺率の低い地域があるにもかかわらず、日本はG7参加先進国の中で自殺率が最も高い国であるのはなぜでしょうか。それは、海部とは反対に自殺率の高い地域が存在しているからでしょう。

自殺率の高い地域があるとすれば、その地域はどのような地域なのでしょうか。極端ではありますが、自殺率の高い地域を考えるために、先に紹介した自殺予防因子の内容を反対にしてみましょう。

自殺予防因子の内容を反対にしてみると、①いろんな人がいてはいけない、いろんな人がいないほうがよい、②点数主義をつらぬく、③どうせ自分なんて、と考える、④「病」は隠せ、⑤必要以上に干渉しないとなります。これは私が反対になっていると考えて作ったものなので、合っているものだとは言えません。

しかし、反対にした①~⑤の因子は近代都市に当てはまるもののように思います。特に、④と⑤は完全に近代都市特有のものです。また、②と③は関連しています。点数主義の社会で良い点数が取れなかった人は、自信を喪失して自らの評価を低くしてしまいます。

少し極端な考え方ではありますが、近代都市では自殺率が相対的に高くなると考えられるのではないでしょうか。

 

海部に見られる「ゆるやかな絆」がその地域に生き心地の良さを与えていると言われてもイマイチピンと来ないと思います。特に、近代都市に当てはまる地域で生活を送っている方は尚更ピンとこないことでしょう。

私もピンとこなかったのですが、番組の最初に海部に住んでいるおばあちゃんが孤独について話していました。海部に住んでいると孤独になることがないようで、おばあちゃんはレポーターに対して「孤独になったことある?」と聞いていました。

私は「孤独」というものが自殺に影響するのではないかと思いました。都市の人々は必要以上の干渉をしないため、海部のような「ゆるやかな絆」がある地域に比べると相対的に孤独になる人が多くなるのでしょう。

人は一人では生きていけません。他者とのコミュニケーション、相互作用が必ず必要になります。そう考えると、孤独でいるというのは生き心地が悪いといえるのかもしれません。海部は「ゆるやかな絆」があり、個人が孤独という状況に置かれることが少ないから、自殺"希少"地域たりえるのかもしれません。

 

今回視聴したドキュメンタリー番組のテーマ設定の決め手となった本『生き心地の良い町』が読みたくなってしまいました。今度買って読もうかな...

 

それでは('ω')ノ